1.AYA世代とは
AYA世代とはどんな時期か?
AYA世代は、進学、就職、結婚、子どもの誕生など、夢と希望にあふれた年代といわれています。同時に、人生の岐路をなんども迎え、その都度悩み、努力して、“ 今” を生きている時期なのではないでしょうか?そして、この悩み、努力して“もがきながら生きる” 経験こそが、人として成熟していくために必要な過程とも言えるのです。少し専門的な視点で見てみましょう。
1 生物学的成長
AYA世代は、大きな身体の変化を遂げる時です。それは生殖器系の成熟です。まず、思春期に外見が男性的・女性的な身体つきになります。これに伴い、変化に対する不安や異性に対する恥じらいを持つようになります。また、性欲、攻撃衝動が高まり、これらの衝動のコントロールの難しさに戸惑います。そういう自分自身と向き合う時期が思春期です。
若年成人期に入ると、精神的・社会的成熟が加わり、自己統制が可能となり、次世代を産み育てると言う責任を意識した行動がとれるようになります。
2 精神的発達
ひとは、他者との関係性において精神的な成長を遂げます。思春期は、共感性の高い仲間集団や時にはそれ以外の集団に身をおき、自分はなにものなのか、なんのために生きているのかと言うことを絶えず探し求める時期です。
若年成人期に入ると、特定の対象者との親密性や連帯感を体験し、自己存在の意味をそこから見出す体験が大切な時期です。恋愛、友人、会社、その他さまざまな場合に相手の良い悪いを含めた存在全体として受け止め、また自分の良い悪いも受け止めてもらう体験です。
ここで大切なのは、思春期に入る前までの精神発達課題を達成していることです。養育者と一体化していた関係から、自分の意志を持ち、努力し、批判や劣等感も経験しながら、最終的には自己肯定感を裏付ける成功体験を重ねていきます。こうして自己の価値観の原型を持ち合わせた上で思春期を迎えるわけです。未熟なまま思春期を迎えると、仲間集団からの孤立や関係性を持つ対象者との病的な関係性に陥ってしまうことが心配されます。
3 社会的発達
思春期に入ると養育者との関係が物理的にも精神的にもさらに離れ、育てられた家族から小集団、社会、そして新しい家族へと、主として存在する場所が移行していきます。
自己価値観の確立の過程において自我理想を求める時期であるので、既存の価値観に批判的になりつつ、自分の価値観を身につけようと思考錯誤しながら、社会の構成員としての責任を果たす経験を積んで行きます。
AYA世代を生きる
このような生物学的・精神的・社会的発達の段階は、個々に、そして各要素毎に異なるので、対面している悩みは多種多様です。AYA世代として、ひとくくりにはできないことが特徴と言えるでしょう。
そして、このような特徴を持つAYA世代の課題として、「自立と依存」があります。大きな変化を遂げる不安定感の渦中での、価値観を獲得するための“もがき”は、成熟した大人にとっては自己中心的に見えてしまいます。そこにがん体験が付帯してくると不安定感は増し、“もがき”も当然ながら激しいものになるでしょう。
AYA世代を生きるとは、側にいる人や社会との距離を適宜変化させながら、その時々の夢に向かって歩み、唯一無二の自己の価値観を確立していくことと言えるでしょう。
注)AYA世代を意味する年齢の幅は、国によりさまざまです。日本では、政策を考える上で、15歳から39歳の広い年齢層を指すことが多いです。